蜂窩織炎 は皮膚表面の傷口などから侵入した細菌による感染や菌血症などが 原因 です。皮膚炎や皮膚潰瘍、足白癬なども細菌の侵入口になります。リンパ浮腫などむくみが続く病気や糖尿病、免疫不全などは蜂窩織炎の誘因となります。
犬やネコ、人に咬まれて生じた蜂窩織炎は通常とは異なる細菌が原因のことがあり注意が必要です。Helicobacter cinaedi菌血症は特に蜂窩織炎を合併することが多いことが知られています。
蜂窩織炎の原因と誘因
蜂窩織炎の原因
蜂窩織炎(ほうかしきえん)は皮膚表面にできた傷口や皮膚の毛穴・汗腺から侵入した細菌が皮下組織に感染することが原因で起こる病気です。“傷”と書きましたが、要は何らかの原因で皮膚表面のバリアーが破綻していれば、外界から細菌が入り込むことが可能になります。
したがって慢性的な皮膚の病気(皮膚炎や皮膚潰瘍など)はもちろん、足の水虫(足白癬)、けが、虫刺され、やけども立派な蜂窩織炎の原因となります。
また別の感染症に伴う菌血症(細菌が全身を循環している血液中に入り込んでいる状態)が原因で蜂窩織炎が起こる場合、さらには周囲組織の感染症(例えば骨髄炎)が波及して蜂窩織炎を来す場合もあります。
蜂窩織炎の誘因
上記以外にも蜂窩織炎の誘因、つまり蜂窩織炎を生じやすいコンディションがあり、順にご紹介していきます。
慢性的にむくみが持続する病気(リンパ浮腫肝硬変、心不全、腎不全など)ではむくんでいる部分に蜂窩織炎を来すことがあります。
リンパ浮腫は子宮がんや乳がんの手術をした人にしばしば出現しますが、このリンパ浮腫があると蜂窩織炎が起こりやすくなるだけでなく、いったん治ってもしばしば再発を繰り返すことが知られています。
また糖尿病患者やHIV患者、アルコール依存症患者を含めた大量飲酒している人、免疫抑制薬やステロイド薬を使用している人など免疫力が低下している人(コンプロマイズドホストと呼ばれます)は蜂窩織炎が起こりやすい傾向があります。
一般的に高齢者も免疫力が低下しますから、蜂窩織炎のハイリスク群であると言えるでしょう。免疫力が低下している人では蜂窩織炎が起こっても皮膚発赤や痛みがはっきりしない、あるいは典型的でない所見となる場合があります。
通常とは違った細菌による蜂窩織炎
別項に記載したように蜂窩織炎を起こす原因菌は化膿レンサ球菌と黄色ブドウ球菌がほとんどです。しかし以下のような蜂窩織炎では原因菌が異なる場合が多く、そのために通常使用する抗生物質とは違う種類のもので治療を開始する必要があります。
心当たりがある場合は必ず担当した医師にその情報を伝えてください。まずはじめに犬やネコに咬まれた部位に生じた蜂窩織炎が挙げられます。Pasteurella multocida感染を想定する必要があります。
動物だけでなく、人に咬まれた傷から発生した蜂窩織炎も侮れません。口の中に存在している嫌気性菌と呼ばれる細菌やEikenella corrodensが原因菌になります。
また肝硬変患者が海水に接触したときに生じることがあるVibrio vulnificus感染は壊死性筋膜炎(この病気の詳細は他項をごらんください)に至り致命的となるケースがあるので要注意です。
Helicobacter cinaedi菌血症
Helicobacter cinaedi(以下H.cinaediと略します)は私たちの腸の中に存在している菌(腸管常在菌)ですが、まれに菌血症を呈することがあります。
H.cinaedi菌血症は上述のコンプロマイズドホストの人に生じた報告例が多かったのですが、明らかな免疫不全がない人に生じたケースも報告されており、近年では免疫不全に限定して菌血症を起こすとは限らないと考えられるようになってきています。
H.cinaedi菌血症は他の細菌による菌血症に比較して特に蜂窩織炎の合併が多いことが知られています。そして一般的に見られる蜂窩織炎の皮膚所見(詳細は他項を参照してください)とは異なり、手や足に出現する紅色~紫色の痛みがある紅斑が特徴的とされています。
コンプロマイズドホストの方にこのような皮膚症状が出現した場合にはHelicobacter cinaedi菌血症を考慮する必要があります。
まとめ
蜂窩織炎の原因と誘因
蜂窩織炎の原因
蜂窩織炎の誘因
通常とは違った細菌による蜂窩織炎
Helicobacter cinaedi菌血症