潰瘍性大腸炎 は大腸粘膜に炎症を生じた結果、びらんや潰瘍ができる病気で、厚生労働省の指定難病です。下痢や軟便、粘血便、腹痛が主な症状で、合併症として大腸癌リスクの増加、原発性硬化性胆管炎、中毒性巨大結腸症などがあります。
重症、中等症、軽症の3つに分類され、治療の基本は薬物療法や血漿成分除去療法などの内科的治療ですが、重症例などでは外科的治療が行われる場合もあります。
潰瘍性大腸炎とはどんな病気?
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎は大腸粘膜に炎症を生じた結果、びらんや潰瘍ができる病気です。原因はいまだにはっきりとわかっておらず、治療法も進歩はしているものの、完治は難しいのが現状です。そのため厚生労働省の指定難病に含まれています。
10歳代後半から30歳代前半の若い人に多い病気ですが、まれに小児や50歳以上の人に起こる場合もあります。
以下のようなさまざまな症状に悩まされるだけでなく、大腸癌を生じるリスクが増加するなどの合併症をともなう場合があります。潰瘍性大腸炎の症状や合併症はクローン病(この病気については他項で詳しく説明しています)と似ている点が多く、鑑別が重要になります。
また潰瘍性大腸炎とクローン病とはまとめて炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)と呼ばれています。潰瘍性大腸炎は上記のように若年者だけでなく、中高年でも生じることがある点でクローン病と異なっています。クローン病は基本的に若年者のみに生じる病気です。
潰瘍性大腸炎の症状
下痢や軟便、粘血便(粘液が混じった血便)、そして腹痛が主な症状です。他の症状としては発熱や体重減少があります。
腹痛は繰り返し出現し、便意を催すものの、少量の下痢や軟便が出るだけで残便感があるのが典型的な症状です。これはしぶり腹(テネスムスとも表現されます)と呼ばれる症状で、潰瘍性大腸炎だけでなく、アメーバ赤痢や偽膜性大腸炎を起こした際にもみられやすい症状です。
したがって血便などの症状だけから潰瘍性大腸炎と診断することは困難です。診断には下部消化管内視鏡検査(いわゆる大腸カメラ)などの検査が必要です。
潰瘍性大腸炎の合併症
大腸癌のリスクの増加以外の潰瘍性大腸炎の合併症として、口腔内のアフタ性潰瘍、関節炎・関節痛、原発性硬化性胆管炎、中毒性巨大結腸症、結節性紅斑、壊疽性膿皮症などがあります。
このうち大腸癌のリスクの増加、原発性硬化性胆管炎、中毒性巨大結腸症は特に潰瘍性大腸炎に多くみられる合併症で、クローン病との鑑別の点から重要です。
大腸癌発癌リスクの増加
潰瘍性大腸炎は病変が大腸に限局していること、そして直腸から病変部が連続しているという特徴があります。この2点もクローン病との大きな違いです。直腸病変は潰瘍性大腸炎のほぼ全例で認める所見です。
一方で潰瘍性大腸炎を発症してから長期が経過すると大腸癌を生じるリスクが増加することがわかっています。そのため定期的な内視鏡検査(大腸カメラ)による早期発見が重要になります。
潰瘍性大腸炎は病変の広がりにより直腸炎型(病変が直腸に限局しているもので、軽症や中等症の人が多い)、もう少し病変部が拡大した左側大腸炎型、そしてほぼ全ての大腸に広がった全大腸炎型の3つに分類されますが、特に10年以上経過した全大腸炎型に発癌が多いことが知られています。
潰瘍性大腸炎の重症度
潰瘍性大腸炎の重症度は重症、中等症、軽症の3つに分類されており、重症度によって治療方針が変わる場合があります。
重症度は排便回数、顕血便、発熱、頻脈、貧血、赤沈値で判定されます。なお重症の中でも症状が激烈で重篤な場合には劇症と判定されます。
潰瘍性大腸炎の治療
潰瘍性大腸炎の治療の基本は薬物療法(くすり)や血漿成分除去療法などの内科的治療です。はじめに記したように完治は難しいために、薬剤を使用しながら病勢を安定させる(この安定した状態を寛解(かんかい)と呼びます)ことが治療目標です。
薬物療法の基礎となる薬がサリチル酸塩製剤で、経口薬や坐薬などがあり、病変部位に応じて使い分けることが可能です。サリチル酸塩製剤以外では副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬(アザチオプリン、6-MP、シクロスポリンなど)が用いられる場合があります。
血漿成分除去療法は患者の血液を特殊なフィルターやカラムに通過させることで白血球成分を除去した後、患者にその血液をもどす治療法です。
これらの内科的治療に反応しない重症例や大出血、中毒性巨大結腸症、癌化などの重大な合併症をともなうケースでは外科的治療(手術)が選択されます。基本となる術式は大腸全摘出術です。
まとめ
潰瘍性大腸炎とはどんな病気?
潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎の症状
潰瘍性大腸炎の合併症
大腸癌発癌リスクの増加
潰瘍性大腸炎の重症度
潰瘍性大腸炎の治療