過活動膀胱 (OAB)は尿意切迫感を主な症状とし、さらにしばしば頻尿や切迫性尿失禁を伴う症候群で、高齢になるほどこの病気で悩む人が多くなります。
過活動膀胱症状スコアはシンプルな症状質問票で過活動膀胱の診断、重症度評価、治療効果判定に有用です。
原因は神経因性と非神経因性の2つに分類されています。神経因性の病気として脳血管障害やアルツハイマー病などが、非神経因性には前立腺肥大症や加齢などがあります。
過活動膀胱とはどんな病気?
過活動膀胱とは
過活動膀胱(英語表記overactive bladderの頭文字からOAB(オー・エー・ビー)ともしばしば呼ばれています)は尿意切迫感を主な症状とし、さらに通常頻尿を伴い(日中だけでなく、夜間も頻尿に悩まされます)、場合によっては切迫性尿失禁も伴う症候群です。
尿意切迫感とは急に我慢することができないほどの強い尿意を生じることで、この尿意切迫感がないと過活動性膀胱とは言えません。ただし尿意切迫感があるから過活動性膀胱であるとは限りません、他の疾患でも尿意切迫感を生じることがあります。
過活動性膀胱では寒さ、水の音、トイレのドアへの接触などをきっかけとして尿意切迫感が起こることがあります。そして切迫性尿失禁とは、尿意を自覚してからトイレに行くまで我慢しきれずに尿が流失してしまうことです。
過活動膀胱は非常に多い病気で、40歳以上の日本人のおよそ12%に過活動膀胱の症状があり、さらに高齢になるほどその有病率は高くなり、80歳以上の高齢者では実に37%に達するとされています。
過活動膀胱症状スコア
頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁をより具体的にイメージしていただくためにここでは2006年にHomma Yらが発表した過活動膀胱症状スコア(oberactive bladder symtom score: OABSS)をご紹介します。
これは日本で開発された過活動膀胱の症状質問票で、過活動膀胱の診断、重症度評価、治療効果判定に用いられており、過活動膀胱が疑われた人全員に行うことが望ましいとされています。
以下の4つの質問のどの答えが一番ここ1週間の自分の状態に近いかを答えていく非常にシンプルなテストです。以下に具体的な質問を記します。
質問1:朝起きたときから寝る時までに、何回くらい尿をしましたか?
7回以上0点、8~14回1点、15回以上2点。
質問2:夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか?
0回0点、1回1点、2回2点、3回3点。
質問3:急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたか?
なしの場合0点、週に1回より少ない場合1点、週に1回以上で2点、1日1回くらいで3点、1日2~4回で4点、1日5回以上の場合5点。
質問4:急に尿がしたくなり、我慢できずにもらすことがありましたか?
なしの場合0点、週に1回より少ない場合1点、週に1回以上で2点、1日1回くらいで3点、1日2~4回で4点、1日5回以上の場合5点。
質問3の尿意切迫感が2点以上かつ質問1~4の合計点が3点以上で過活動膀胱と診断されます。また質問1~4の合計点が5点以上で軽度、6~11点で中等度、12点以上は重症と判定されます。
過活動膀胱の原因
神経因性と非神経因性の2つに分類されます。
神経因性は中枢(つまりは脳とその命令を伝える脊髄のことです)の排尿制御機構がうまく働かないことが原因で起こります。
代表的な病気としては脳梗塞などの脳血管障害(脳血管障害の詳細については他項をごらんください)、アルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症、脊髄不全損傷などによる神経因性膀胱があります。
神経因性膀胱とは排尿に関係する脳、脊髄、末梢神経の障害が原因で膀胱の蓄尿や排尿の機能に異常をきたした状態のことを意味します。
一方で非神経因性は上述したような神経性の病気を特定できないときに診断され、その原因として膀胱の知覚亢進や排尿筋(尿を出すときに使用する筋肉)の収縮性亢進などが想定されています。
代表的な病気や異常として中高年の下部尿路閉塞(例えば男性の前立腺肥大症など)、中高年女性の骨盤底筋群(骨盤底に位置して膀胱、尿道、直腸、膣、子宮などの臓器(これらを骨盤内臓器と呼びます)が骨盤出口から脱出しないように支えている筋群のことです)の衰えなどがあります。
加齢も非神経因性の原因のひとつです。加齢で過活動性膀胱が起こる機序について正確なところは未だにはっきりとしていませんが、脳内の伝達物質であるアセチルコリンやドパミンが関係していることが想定されています。
まとめ
過活動膀胱とはどんな病気?
過活動膀胱とは
過活動膀胱症状スコア
過活動膀胱の原因