過活動膀胱 の 治療 の基本は原疾患の治療と保存的治療で、保存的治療には行動療法と薬物療法があります。
行動治療には水分制限などの生活指導、排尿を我慢する膀胱訓練、理学療法があります。薬物療法として抗コリン薬やβ3受容体作動薬が処方されます。
抗コリン薬はもっとも多く使用され、ガイドラインでも推奨されている薬剤ですが、口渇や便秘などの副作用があり、とくに高齢者で副作用が出やすい傾向があります。
過活動膀胱の治療法はくすりだけではありません
過活動膀胱の治療の基本
過活動膀胱の治療の基本は原疾患の治療と保存的治療です。
原疾患の治療とは、例えば前立腺肥大症に伴って過活動膀胱が起こっている人では、まず前立腺肥大症の治療が開始されます。
保存的治療は行動療法と薬物療法の2つからなり、行動療法には生活指導、骨盤底筋訓練などの理学療法、膀胱訓練があります。
膀胱訓練とは尿意を感じてから排尿するのをできるだけ我慢し(過活動膀胱患者さんのなかには“トイレを我慢してはダメ”と思っている人がいますが基本的には我慢してもOKです)、排尿間隔を延ばしていくことで、膀胱に失禁せずに溜めることができる尿量を増加させていく訓練法のことで、機能が低下した膀胱を少しずつ鍛えていくイメージです。
トイレにすぐ行くのを我慢するだけですから非常にシンプルな方法ですが、膀胱訓練が不適当な場合もありますので自己判断ではなく、医師の指示に基づいて行うようにしてください。
排尿間隔を空けていく際には排尿日誌をつけ、尿意を感じてから我慢した時間や尿量、排尿回数を記録すると効果がよくわかります。
生活指導
行動療法の中でもっとも大切であり、過活動膀胱に悩む人全員に必須といっても過言ではありません。なかでも適量の水分を摂取することは基本中の基本です。熱中症や脳梗塞、心筋梗塞を恐れるあまりに水分をとりすぎている人が少なくありません。
もちろん水分不足(脱水)を避けることは大切ですが、過剰に飲んだ水分は尿として排出されるだけで、体内に蓄えておくことはできません。まずは1日に自分がどれだけ水分を摂取しているかと排尿日誌を記録してみることをおすすめします。
具体的な自分に適した水分摂取量はかかりつけの先生に排尿や水分摂取の記録を持参して尋ねるとよいでしょう。
一般的に1日2500ml以上は多すぎますし、体格によっては2000ml以上も過剰な場合があります。また糖分や塩分が多い食生活をしているとのどが渇き、水分摂取量が多くなりがちです。心当たりのある人はこれらを制限することも重要です。
また肥満の人が体重を減らすことは過活動膀胱診療ガイドライン第2版(日本排尿機能学会過活動膀胱診療ガイドライン作成委員会(編)、2015年)で強く推奨されています(グレードA)。
過活動膀胱の薬物治療
過活動膀胱に対する薬物療法として抗コリン薬やβ3受容体作動薬が処方され、いずれも上記ガイドラインにおいてグレードAとして推奨されています。
グレードは低いですがフラボキサート、漢方薬(牛車腎気丸)、エストロゲンが使用されることもあります。これらは上記ガイドラインでは全てグレードC1となっています。
膀胱の異常な収縮を抑えることで過活動膀胱の症状を改善する抗コリン薬は過活動膀胱の治療薬のなかでも有効性や安全性についてのデータの蓄積が最も豊富な薬剤であり、過活動膀胱治療薬として最も多く使用されています。
現在日本ではさまざまな抗コリン薬が使用可能であり、1日3回服用するもの、2回服用するもの、1回だけでよいもの、薬剤の量を調整できるもの、さらには経皮吸収型製剤(貼り薬)も発売されています。
貼り薬の抗コリン薬は飲み薬の抗コリン薬に比べて副作用(詳細は下記)が少ないことや他の薬剤(高血圧や認知症の薬など)を既にたくさん服用している人に使用しやすい、嚥下機能が低下している高齢者にも誤嚥を気にすることなく使用できる、などのメリットがあります。
ただし薬を貼った部位に皮膚炎などの皮膚症状が出現することがあり注意が必要です。
抗コリン薬の副作用と高齢者
抗コリン薬の副作用として口の渇き、便秘、尿が出にくくなるなどがあります。特に高齢者では抗コリン薬の副作用が出やすく、副作用が出現したときには若い人よりも重症化しやすい傾向があるために注意が必要です。
そのために高齢者の過活動膀胱治療は治癒を目標とするのではなく、症状の軽減を目指すという意識をもつとよいでしょう。
またどうしても全身の他の病気を有していることが多い高齢者では、他疾患で処方されている薬剤が下過活動膀胱の症状を悪化させているケースがあることにも気をつけておく必要があります。
まとめ
過活動膀胱の治療法はくすりだけではありません
過活動膀胱の治療の基本
生活指導
過活動膀胱の薬物治療
抗コリン薬の副作用と高齢者