認知症はさまざまな原因で起こりますが、およそ10%弱にtreatable dementia(治療可能な認知症)と呼ばれる早期に発見し、適切な治療を行えば 認知症 症状の 改善 ・治癒が期待できる病気があります。treatable dementiaでありながら放置されているケースも少なくありません。
ここではその中から甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症を御紹介します。
改善する可能性がある認知症
治療可能な認知症
有名なアルツハイマー型認知症以外にもさまざまな原因によって認知症は起こります。認知症のおよそ10%弱にtreatable dementia(トリータブル・ディメンティア。直訳すれば“治療可能な認知症”)と呼ばれるものがあります。
これらは早期に発見し、適切な治療を行えば認知症の症状が改善、場合によっては治癒することも期待できます。
残念なことですが、実際はtreatable dementiaであるにもかかわらず、年齢のせいと考えて放置している、あるいは一般的な(例えばアルツハイマー型)認知症と思われて医療機関を受診せずにいることも少なくありません。さらには病院を受診していても見逃されているケースもあります。
treatable dementiaにもさまざまな病気や原因があり、甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、ビタミンB1欠乏症、脳腫瘍、薬物などがあります。この項では特に甲状腺機能低下症、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症について解説していきます。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は甲状腺で産生されている甲状腺ホルモンが足りなくなる病気です。さまざまな原因によって起こりますが、その多くは慢性甲状腺炎(発見した日本人の名前から橋本病とも称されます)です。
認知機障害以外ではむくむ、皮膚が乾燥して荒れる、動作が鈍くなる、何となく活気がない、寒がりになる、などの症状が出ることがあります。甲状腺機能低下症を起こしているか否かは採血検査で甲状腺ホルモンの値を測定すれば簡単にわかります。
ただし甲状腺ホルモン検査は一般的な健康診断や人間ドックの採血検査の項目には含まれていないことがほとんどです。治療はとてもシンプルで甲状腺ホルモン剤を内服するだけでOKです。発見されるかどうかが全てといっても過言ではないでしょう。
慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫(まんせいこうまくかけっしゅ)は頭の骨の内側で脳を包んでいる膜と脳表面との間に血液がたまる病気です。血液は少しずつたまっていくために、症状も徐々に生じてくることが大多数です。
認知機能低下以外には歩行障害、頭痛、意識障害などの症状が出現することもあります。
典型例では頭部外傷後(例えば転倒して頭を強くぶつける)数週~3ヶ月程度で発症しますが、高齢者では頭部外傷受傷歴がはっきりしないケースや、ごく軽微な外傷が原因となる場合も少なくありません。
症状は徐々に生じると上述しましたが、日~週の単位で悪化していくことが多く、この点がアルツハイマー型認知症との鑑別点になります(アルツハイマー型認知症ではもっとゆっくりと進行します)。
頭のCT写真を撮影すれば、診断に困ることは少ない病気です。脳神経外科の医師が行う血腫除去術により、認知機能が劇的に改善する場合があります。
正常圧水頭症
頭の中を循環している脳脊髄液(のうせきずいえき)が異常にたまってしまう水頭症と呼ばれる病気の一種です。
正常圧水頭症はくも膜下出血や脳出血、髄膜炎、外傷などの後遺症として生じる場合(これらを続発性正常圧水頭症と言います)と、原因がはっきりしない特発性正常圧水頭症がありますが、高齢者では特に特発性が多いとされています。
正常圧水頭症の認知障害以外の症状には歩行障害や頻尿・尿失禁があります。歩行障害は歩幅が狭くなるところがパーキンソン病と共通している点ですが、パーキンソン病とは異なり開脚性歩行やがに股歩行と呼ばれる幅広い歩行となることが正常圧水頭症の歩行障害の特徴です。
頭のCT写真で脳室拡大と呼ばれる所見を認めた場合に正常圧水頭症が疑われます。正常圧水頭症の患者さんに脳脊髄液を減らす手術や処置(脳神経外科が担当します)を行うと認知障害が改善するケースがあります。
まとめ
改善する可能性がある認知症
治療可能な認知症
甲状腺機能低下症
慢性硬膜下血腫
正常圧水頭症