糖尿病性腎症 は糖尿病3大合併症の1つです。初期には自覚症状はありませんが、進行すると腎不全となり、透析療法が必要になります。毎年たくさんの人が腎症のために新しく透析療法開始になっており、社会的にも大きな問題になっています。
さらに腎症が心臓や血管の病気と関連していることもわかってきています。腎症は1から5期まで病期分類されており、数字が大きいほど腎臓の機能が低下していることを表します。
腎症の特効薬はなく、血糖や血圧の適切な管理や塩分制限により発症を予防し、進行を抑制することが治療の目標になります。
糖尿病性腎症
糖尿病性腎症とは
糖尿病性腎症は糖尿病性網膜症、糖尿病神経障害とともに糖尿病の3大合併症の1つです。初期には自覚症状は全くありませんが、進行すると末期腎不全となり、透析療法が必要になります。
腎臓は体内の老廃物をろ過し、尿として排泄するはたらきをしていますが、腎症が進行して腎不全になると尿を作る機能が低下し、最終的には器械に腎臓の機能を代行してもらわないと生きることができなくなります(透析療法と呼びます)。
日本では新しく透析療法を受ける患者さんの原因となった病気の第1位が糖尿病という状態が続いており、人数も多い(2012年の統計で新しく透析を始めた糖尿病性腎症の患者数は1年で1.6万人程度)ことから、大きな社会問題になっています。
糖尿病性腎症は高血糖に加えて、高血圧、高食塩や高タンパクの食習慣、肥満、脂質異常症などにより進行が進みます。また血縁関係に糖尿病性腎症の人がいると遺伝的なことや食生活の習慣が似ているために、自分も腎症になりやすくなることが知られています。
糖尿病性腎症の病期
糖尿病性腎症は進行の度合いにより第1期から第5期までに分類されており、数字が大きくなるにつれ、腎臓の働きが悪いことを示します。ただし必ずしもこの順番どおりに進行するとは限りません。
第1期(腎症前期)はまだ腎症を起こしていない状態です。第2期(早期腎症期)は尿の中のわずかな量のアルブミンを高感度の検査法で見つける微量アルブミン尿検査が異常となる時期です。微量アルブミン尿検査は健康診断や人間ドックで通常行われる尿検査には含まれていません。
第3期は顕性腎症期と呼ばれます。通常の尿検査でタンパクが検出されるようになるので、“顕性”と呼ばれます。この時期になると、腎臓の機能が急激に悪化することもあり、透析導入を視野に入れなければならない人も出てきます。
第4期(腎不全期)では腎臓で十分に血液をろ過することができず、水や老廃物が体にたまるようになります(尿毒症と言います)。腎臓が赤血球をつくる機能も低下するので、貧血(腎性貧血)になる場合もあります。尿のタンパクやアルブミンに関係なく、eGFRという腎臓の機能の数値が30ml/分/1.73m2未満になると第4期と判断されます。
最後が第5期(透析療法期)で生命を維持するためには透析療法か腎臓移植が必要になります。
糖尿病性腎症の症状
糖尿病性腎症は症状を自覚しないうちに少しずつ進行していきます。第1期はもちろん、第2期でも自覚症状はありません。ただしこの第2期では血圧が上がる人が多くなることが知られています。第3期に進行すると個人差はありますが、むくみが出てくる人がいます。
第4期ではむくみの他に、尿毒症のために体がだるくなる、食欲が落ちる、さらには尿毒症により神経が障害されるために、皮膚がかゆい、手足が痛む、といった症状が出ます。むくみに気づいたときには、すでに透析開始が視野に入るほど進行している場合があることを覚えておいてください。
糖尿病性腎症の治療
残念ながら糖尿病性腎症の特効薬は現時点では存在しません。したがって、予防と、進行を抑えることが治療の目標になります。血糖コントロールを良好に保つことはもちろん、血圧のコントロールと塩分制限が治療の中心となります。
特に日本人高齢者は塩分を過剰に摂取している人が多いので、要注意です。糖尿病性腎症の病期が進むほど透析開始を先延ばしすることが治療の中心になってしまいます。したがって予防と早期発見、特に第2期(早期腎症期)での腎症の発見が重要です。
糖尿病性腎症と心臓・血管病
糖尿病性腎症が進行すると、腎不全にならなくても、心臓や血管の病気を起こしやすくなることが最近わかってきました。心臓や血管の病気は命にかかわる場合も少なくありません。腎症の発症予防、進行抑制は腎臓だけの問題ではないことになります。
まとめ
糖尿病性腎症
糖尿病性腎症とは
糖尿病性腎症の病期
糖尿病性腎症の症状
糖尿病性腎症の治療
糖尿病性腎症と心臓・血管病