「死亡率が高い腸閉塞(前編)」では、死亡率の高い絞扼性イレウスについてご説明致しました。絞扼性イレウスにより血流障害を起こした腸は早ければ数時間で腐ってしまうので、一刻も早い治療が必要となります。
後編では、 死亡 することもある危険な 腸閉塞 を生じる病気についていくつかご紹介致します。
死亡率が高い腸閉塞(後編)
内ヘルニア
内(ない)ヘルニアとは腸や肝臓、すい臓などがおさまっている腹腔内にある凹み(陥凹部)や穴(裂孔部)に腸がはまり込んで、動けなくなる状態です。この腸が動けなくなってしまった状態をヘルニアの嵌頓(かんとん)と言います。
これに対して腹腔の外に脱出するヘルニアを外(がい)ヘルニアと呼び、臍(さい)ヘルニア(いわゆるでべそです)や鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸です)が有名です。
内ヘルニアは、はまりこむ場所によってさまざまな種類がありますが、ほとんどの場合が小腸での閉塞状態を起こし、腸間膜ヘルニアと傍十二指腸ヘルニアでその過半数を占めます。
外ヘルニアは体の表面を念入りに観察すれば見つけることが多い病気ですが、内ヘルニアの場合は外側からの診察では見つけることができず、それどころか前もって知識がないと思いつくことさえできません。
したがって手術歴のない原因不明の腸閉塞をみた場合、内へルニアの可能性を考慮する必要があります。内ヘルニアは絞扼性イレウスを起こしている場合が多いので、多くの場合は緊急手術の対象になります。
外ヘルニア
外ヘルニアにもさまざまな種類がありますが、状況によっては緊急手術が必要になる場合もあります。ここでは、高齢(特に80歳以上)で痩せ型の女性に多い閉鎖孔ヘルニアをご紹介します。
このヘルニアは外ヘルニアでありながら、脱出したヘルニアを触診で触れることがとても難しいために、診断・治療(診断が確定すれば原則として速やかに手術が必要です)が遅れがちになり、腹膜炎となる割合が高いことが知られています。
さらに超高齢者に多いこともあってか、手術成績も不良で、1~2割は死亡するとも言われています。閉鎖孔ヘルニアの患者さんがふとももの内側に痛みやしびれを訴えることがあります。
Howship-Romberg徴候(ハウシップ・ロンベルク徴候)と呼ばれるこのサインは、閉鎖孔ヘルニア患者さんの全員にあるわけではありませんが、このサインがあると閉鎖孔ヘルニアを疑う重要な手がかりになります。
腸間膜動脈虚血
腸に栄養や酸素を供給している血管が動脈硬化や血栓(血のかたまり)で詰まってしまうことで、腸の動きが悪くなり、腸閉塞を起こします。
心筋梗塞(心臓の筋肉に栄養や酸素を供給している血管が詰まる)や脳梗塞(脳に栄養や酸素を供給している血管が詰まる)が腸で起こったものと考えるとわかりやすいでしょう。
心筋梗塞や脳梗塞と同じく、できるだけ早期の治療が必要で、治療が遅れると血流が途絶えた腸は腐ってショック状態となり、救命できないことも少なくありません。
心筋梗塞や脳梗塞と同様に突然生じることが多い病気で、多くは腹痛で発症します。また原因も心筋梗塞や脳梗塞と同じく、糖尿病や高血圧などの病気を背景にした動脈硬化や、心房細動という血栓ができやすい不整脈の持病をもっている方に起こることが多い病気です。
その他の原因
捻転といって腸が何らかの原因でねじれてしまう病気や腸重積などでも絞扼性イレウスが起こる場合があります。腸重積は小児でも時折起こる病気ですが、特に高齢者では大腸癌などの腫瘍が腸重積の原因になっていることがあります。
まとめ
死亡率が高い腸閉塞(後編)
内ヘルニア
外ヘルニア
腸間膜動脈虚血
その他の原因